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築100年以上の町家の改装。
長年の年月が創りだした建物の歪みや隣家との音の問題など、対処を迫られる箇所の多い賃貸町家で、
壁を解体することや天井を剥がすなどはできない。
つまり引き算はできないという前提の中で、プラスをするときに家具の持つスケールと密度に注目した。

本計画のテーマは、行為とモノの関係が作り出す密度である。

京間という寸法体型は、現代の流通材料に対して少し大きいため、そもそも材料をどう使っても非効率である。
そこで、ある決められた寸法の繰り返しではなく、それぞれの場所に応じた寸法体系を使うことによって、
多くのモノや行為を包含しつつ、我々がこれまで取り組んできている身体的スケールからモノを作るという考えを
体現できる空間を目指した。

平面的な構成は、3部屋の続き間となっている、典型的なうなぎの寝床である。
一番奥の部屋を執務室、一番手前の部屋を模型制作や打ち合わせ用の部屋とし、
中央の部屋はキッチンや2階への動線にもなるため、可変性のある部屋とした。
小さなテーブルを配置し、執務空間の延長とも打ち合わせ空間の延長とも取れるような扱いとしている。

執務空間は、L字型のテーブルを一人当たりの基本としている。
平面的にはテーブルの凹凸を互いに交わしながら空間を取り合うように配置した。
テーブルの天板から上部550mmを作業空間とし、作業空間の上下には本棚を設けた。
本棚は捻れたような形態となっているため、棚の奥行きが変わり、様々な大きさのものを置く事ができる。
これらを基本的な考えとして、打ち合わせ空間にも模型製作用のテーブルと本棚を設けている。

今回の計画では、築100年の町家の凹凸や歪みに対して、新たに設える家具が寄り添い、多様な寸法を持つことで、
多くの物と行為を受け入れる場所を提供している。

身近なモノや行為を細かく配置していくことは、一見、限定性を強めてしまうようにも思えるが、
空間が能動的に人の動きや行為に対して応える空間にもなり得る。
賃貸物件で現状復帰を前提としてる中、リノベーションとまではいかないまでも、空間の質を変える手法として、
巨大な家具を挿入し、空間にプラスの操作をしていくことは、有効な手段である。

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Project Details

Main use :office
Location :kyoto
Total floor area :70㎡
Contructor : pivoto
Furniture :pivoto
Photo :Yasutake Kondo
STATUS :Completed Project
YEAR :2012