世田谷区の住宅街に建つ住宅である。
住人は、母子二人と大型猫2匹という家族構成である。
狭小敷地かつ、袋地に接道しており、周辺建物との距離が近いという条件の敷地に対し、
猫との暮らしを楽しむことのできる住まいを求められた。
人プラスαの住まいの設計は初めてではないが、猫と住まう家というのは初めてのことであった。
犬や鳥などとは全く異なる条件であり、空間の構成とダイレクトに関わる存在として、クライアントと共に猫の習性などを確認しながら設計を進めた。
クライアントとの話し合いをすすめる中で注目すべきは、猫目線の要求である。
窓の設け方や、吹き抜けの利用、猫の居場所についてなどの猫の習性を満たすような要求がクライアントのイメージするシーンとともに伝えられた。それと同時に、クライアント自身の生活スタイルとしての要求も出された。
つまり、都市スケールの要求、人スケールの要求、猫スケールの要求の3つの要求が互いに絡み合うことで、空間の構成を決定していくこととなった。
猫と空間のシーンからつくる
建物の外形は、敷地に対して最大限のボリュームを確保する形としている。敷地北側の水路に平行に長方形の最大平面を配置し、前面道路斜線により切り取られる形が捻れた屋根面として現れている。
少しでも床面積を確保すべく、3層作ることが前提で設計を進めた。
空間の構成は、シンプルに一層目が、水回りや機能的な空間。二層目は、LDK。三層目は、寝室となっている。
クライアントから、猫の好む場所や生理的なことなどを聞き出すうちに、二匹がじゃれ合う場所や、隠れる場所、外の様子を眺める場所、トイレなど、猫の居場所や姿勢は、立体的に点在し多様であり、空間の設えと共に捉えられていることがわかってきた。
そこで、それぞれの猫の状態をシーンとして散りばめることで、猫側の要求を満たそうとした。
例として上げると、猫は窓際に居場所を求め、カーテンなどの裏側に入り込み外の様子を眺めながら過ごすことが多い。
その他、棚の上に上がることが多く、花瓶や人形と等価な存在のように、そこに佇む事がある。
など、猫がいる状態を話すときに、常に空間の設えや視線の抜けのことなどがあげられた。
このように、猫の要求をシーンとして捉え、空間の構成と家具の配置を決めていった。
今回の住宅のように+αの存在を受け入れる暮らしを求める人は、コロナの影響もあり増えてきていると予想される。
室内での暮らしぶりが、+α側の要求を取り入れ、空間のあり方が変化していくことも予想される。
これまで以上に+α(犬、猫に限らず植物、水生生物等も含む)を家族の一員として捉え、そちら側の要求を満たす空間が増えていくことで、これまでに無い空間の質や豊かさが今後発見されていくことを期待している。